ヘアドネーションのウィッグができるまで

原毛処理工程


「皆様からヘアドネーションされた毛髪はどういう過程を経て、ドニーの元へ送られるのか」
それは皆様の協力無しでは絶対に成り立たないこのヘアドネーションという取り組みにその過程を公表せずに広がりや共感してもらえることは無いと、NPO Japan Hair Donation&Charity を9年前に立ち上げた時から感じていたことでした。

どの海外の原毛処理工場やwig工場もその工程を公表することにより、他のライバル工場への技術流出や企業機密などの流出を懸念し、なかなかいい答えををもらえることはありませんでした。

そんな中、コツコツと3年間交渉を続け、地道に活動を行う過程で、増えるウィッグ希望者の数をどうしても解消して一人でも多くウィッグを届けたいという思い。
ウィッグを150人以上届け続けた実績。
何よりもこの活動に賛同していただける人々の広がりにだんだん工場側も理解を示していただき。
今年ついに「あなたたちの熱意は本物である」という言葉と視察許可、写真公開許可
をいただきました。
ただし場所を明かさない、従業員のプライバシー保護の為、顔ははっきりとのせないという条件のもと今回、工場視察をすることになりました。

訪れる前はフェアトレードは行われているのか?ドネートされた髪の毛が本当に100%使われているのか?工場を訪れてみて、そのような疑問は何もかも杞憂でした。
工場では適正な人件費で雇用されており(むしろ雇用関係はかなりいいように感じました)そこでは人々が生き生きと働く姿でした。

ちょうど、日本から送った皆様からのドネートされた毛髪がまさに今から化学処理されようとしていた場に立ち会い、その工程を全てを見学し、職人の方々や工場の社長、従業員の方と対話し、共に作業を体験することにより、全てがクリアになり、今回こういうカタチで原毛処理の工程を公表できるようになりました。

現在、未だ140名位近くの子供達がウィッグを待っています。
毛髪も資金も正直まだまだ足りません。
引き続き、皆様のご協力を感謝しつつ、これからも末長いご支援をお願いいたします。

最後に工場側の企業機密を快く取材させて頂いた原毛処理工場の社長及び従業員の方々に大変感謝します。 

[原毛処理工程vol1]

ドネーションされた毛髪を化学薬品に浸けて毛表皮(キューティクルを)取り除きます。

意外でしょうが毛表皮(キューティクル)のみを取り除くことで髪の毛を扱いやすくすることができます。
キューティクルはうろこ状になっており、キューティクルのみを取り除くことで方向が関係なく毛髪が使用できます
この薬品の濃度調整や浸け置く時間を見分けるのは熟練の技のようで

ダメージをいかに与えずキューティクルのみを取り除くには、かなりの経験則がいるようです。

[原毛処理工程vol2]

毛表皮(キューティクル)のみを酸性の薬品で取り除いた後は毛髪のPHを整えるのに薬品で中和作業を行います。
この時点では様々なドナーの方の毛髪の質感が整ってきますが、色味はまだバラバラで全く揃っていない状態です。
ダメージの大きい毛髪は酸性の薬品で溶けてしまったりしてしまうので、放置する時間や中和するタイミングが相当の経験則がいるようです。
ちなみに、ファッションウィッグに使用する毛髪はこの工程の前にブリーチ剤で金髪まで色を抜いていくのですが、

皆様の毛髪はなるべくダメージを避けるためにその工程は使用しません

[原毛処理工程vol3]

中和剤で中和し終わった毛髪です。薬品で髪の毛のトーンも明るくなっているのがわかります。
髪質により色もバラバラの状態です。ここから色味を均一になるように染毛を行なっていきます。
髪の毛もこの状態で見るとかなり絡まり合っています。この状態で見るとどうなるんだろうと相当不安になりました。

[原毛処理工程vol4]

ここから染毛工程に移っていきます。染毛剤が入った釜に毛髪を漬け込んだのち揉みほぐしていきます。
この工程の作業場は大きな流しや釜がいっぱいあってなんだか給食室や食品加工工場に見えてしまいます。

[原毛処理工程vol5]

染め上がった毛髪の様子です。
水にさらして染毛剤を洗い流します。

[原毛処理工程vol5]

染め上がった毛髪は職人さんの手で何度も何度もすすぎながら手作業でほぐしながら絡まった毛髪を丁寧に丁寧にほぐしていきます。

この際、毛髪の毛表皮(キューティクル)を薬品で取り除いている為、絡まった毛髪はほぐれやすくなっています。
本当に気が遠くなるような作業を職人の技で黙々とこなしていきます。

[原毛処理工程vol6]

理事長も染毛された髪の毛をほぐしていく作業を手伝っておりましたが、流石、現役の美容師!この工程は職人さんと同じ速度でこなしていました!

それを見た工場長より「明日からうちで働かないか?」と言う冗談も飛び交い和やかな雰囲気で作業は進んでいきます。

[原毛処理工程vol7]

染毛された毛髪は解きほぐされ、一定の毛束にしてゴムで結わえて束ねていきます。

(左がまだ絡まった状態の毛束です。右側が解きほぐされ束ねられた毛束)
この段階で薬品を使った毛髪の処理はほぼ終わりとなります。
酸性の薬品を使った排水はどうなるんだろうと?と思い質問したところ、廃水はタンクに流して溜めて石灰と混ぜて中和し無害化したのち

廃水処理業者に引き渡すとの事をおっしゃておりました。 そのためておくタンクがこの作業場の裏に沢山ありました

[原毛処理工程vol8]

束ねられた毛束は専用の脱水機にて脱水します。 先ほどの工程でゴムでしっかり結わえているのでバラバラになることは無いそうです。

音も意外とうるさくなく、なんだか喋ってる間にいつの間にか終わっていました。
まさか、髪の毛を脱水機にかけるとは思いませんでした、、やはり自分の目で見て見ないと分からないものですね。

この作業場でのプロセスはこれでおしまいになります。

髪の毛の質感、色を均一化し終わった皆様からドネーションされた毛髪はこれから違う作業場へと運び込まれて乾燥プロセスをへて、

別の工程作業を行なっていきます。 ここまでで既に9つの処理作業が行われました。
やはり、人の手でないと出来ない工程ばかりだと感じました。機械化は難しいだろうなあと言うのが見せて頂いて感じた事です。

[原毛処理工程vol9]

皆様からドネーションされた髪の毛は乾燥作業場(ドライプロセス)と呼ばれるところに運ばれて乾燥作業に入ります。

この作業所は天井がガラスで出来ていて太陽の光で乾燥させます。 雑菌が繁殖しない様にスピードよく並べていきます。

カートに乗せられているのが先程の科学処理された皆様からドネーションされた髪の毛です。意外と広い場所でした
ちなみに干してあるのはミャンマーの小数民族のブリーチされた毛髪だそうです。一瞬 畳鰯が干してある様に見えてしまいました
こう見ると毛髪の束も薬品処理後はかなり目減りしているのがわかります。天気にもよりますが約丸1日で乾くそうです。

[原毛処理工程vol10]

化学処理を終えた毛髪が乾燥が終わり、本日から梳毛、選毛、整毛、結束作業が始まります。
この梳毛作業はまず、化学処理を終え乾燥させた毛髪を大きな剣山のような道具で梳かして毛髪に艶を与えゴミや汚れなどを取り除いていきます。
髪の毛のをブラッシングする感じに近いです。写真だとわかりずらいのですが、この工程が職人技の極みを感じました。

職人さん一人一人が間仕切りされた低い作業机で黙々と作業をこなしていきます。

この間仕切りは隣の職人の毛髪が混じらない目的で使われているそうです。
音楽や喋り声は全く聞こえず、ただただ髪の毛を梳く音だけが響いています。
細かい物を扱うので集中する為に音楽等はかけないようです。余りにも皆、真剣過ぎてカメラのシャッターを押すのに気後れしてしまうほどでした。
毛髪科学処理の作業場の和気あいあいした雰囲気とは対照的です。この工程は本当の熟練職人しか出来ないとないようです。

[原毛処理工程vol11]

梳毛が終わると毛髪の選毛作業に移っていきます。
この工程では髪の毛の状態や長さなど細かいカテゴリーに仕分けて行く作業を行います。これがなんと手仕事というのが気の遠くなる話です 。

職人さんが1束1束髪を掴み、長さや髪質によってパッパと分けて、剣山で梳きながらツヤを出していきます。

その選毛の作業の速さは目を疑います。
熟練職人しか出来ないのも納得です。

この科学処理した髪の毛表皮(キューティクル)を剥がしていますので毛髪に天地がない状態です 。
ご自身の毛髪を触られると実感できると思いますが、毛が生えてる方向の逆から触ると少し引っかかりがあると思います。この引っ掛かり(毛表皮)を無くしていますので、どちらの向きの髪の毛が混じっても使用できる状態です。

この辺りの工程に移ってから、理事長にはお手伝いさせてもらえなくなりました 。
かなりセンシティブな作業のようですさてこの気が遠くなるよ選毛作業が終わると次の工程に移っていきます。

[原毛処理工程vol12]

選毛作業の工程が終わると毛髪の束を職人さんが一本一本検品していきます。 ここでは色の違う髪の毛が混入していないか、

ヨレたり、ゴミなど混じってないか手作業で紙の束をチェックしていきます。

写真でもお分かりになるかと思いますが、毛束はすでに艶が出てかなりクオリティーが高い毛束が姿を現し始めました。

[原毛処理工程vol13]

検品された毛髪は整毛処理に入ります。 毛髪を整え束にしてその束を結束しやすいように並べながら細かい長さ別に揃え、均一に整えていきます。

様々な人からドネーションされた髪の毛は色、質感、長さを均一化されてwigに使用できる髪の毛へと生まれ変わろうとしています。

[原毛処理工程vol14]

いよいよ最後の工程です!!!
生まれ変わった皆さんからドネーションされた髪の毛は約20人分程度の髪の毛の束に結束されます。

職人さんの凄さは何か使って計らずしてもほぼ全部誤差なく感覚のみで同じ重さの髪の束に結束されていきます。
手仕事の凄さを思い知りました。
ちょうど皆様からドネーションされた髪の毛を工場到着から最後の処理まで追いかけることができて、

結束作業を目の当たりにしてなんだか目頭が熱くなってしまいました。
この後、生まれ変わった髪の毛は梱包され、また日本へ送り返されます。

処理後の毛髪がウィッグになるまで


[ウィッグ作成指示書をタイ語に翻訳]

[キャップのサイズ・毛髪の長さを修正]

[毛髪を準備する]

[ファイバーセクション]

[折り返し部分に目印をつける]

[カラーリング]

[水を染み込ませる]

[ブラッシングする]

[パイプで包む]

[溶剤(1液)をつける]

[溶剤(1液)を染み込ませる]

[作業台の洗浄]

[溶剤(1液)を洗い流す]

[溶剤(2液)をつける]

[溶剤(2液)を染み込ませる]

[溶剤(2液)を洗い流す]

[自然乾燥]

[乾燥室で乾かす]

[キャップ]

[毛植え]

[検品・梱包・発送]